えんたねす

第１４４回芥川賞・直木賞の受賞者の会見が17日にありました。
芥川賞は「きことわ」の朝吹真理子さん(26)と「苦役列車」の西村賢太さん(43)が受賞。
直木賞は「漂砂のうたう」の木内昇さん(43)と「月と蟹」の道尾秀介さん(35)が受賞しました。

そこで芥川賞の朝吹真理子さんが慶應義塾大学修士課程文学研究科に在籍する大学院生で父親がフランス文学者で詩人で慶應義塾大学法学部教授の朝吹 亮二であること、祖父もフランス文学者で慶應義塾大学文学部フランス文学科専任講師、のち法学部教授の朝吹三吉といういわゆるサラブレッドだった事で、その日のマスコミではほとんどが朝吹真理子さんが中心でした。

しかしそのニュースの後にネットで話題になったのは同じく芥川賞受賞の西村賢太さん。
西村賢太さんは中学卒業後に肉体労働で生計を立ててきて、現在もフリーターに近い、そして朝吹真理子さんと対比して西村賢太さんの父親の話も出ていて、本人曰く
「やっぱり父親が非常に問題のある人物なんで。ただまだ生きているんですよ。こいつが死ねばもうちょっとあけすけに、そりゃあもう書けるんですけどね（笑い）。」
と言う受賞会見の場面が出てました。

西村賢太さんの父親は1978年秋、実父が強盗強姦事件を起こして逮捕されています。そのために両親が離婚しているんですね。
西村さん自身も暴行傷害事件で二度逮捕歴があり東京地裁で罰金刑を受けています。

そして23歳の時に大正時代の無名の作家、藤沢清造の作品に出合って共鳴し「僕よりダメな人がいて、それで救われた」と語っています。
現在は西村賢太さんの自費で刊行予定の清造全集の個人編集を手掛けていたりします。

会見で「きょう受賞が決まった瞬間は、誰とどこにいましたか。」と言う質問に西村賢太さんは
「自宅で。そろそろ風俗行こうかなって」「行かなくてよかったです。」と語り笑いをとっていました。


この西村賢太さんという人、もう完全にキャラクターとして面白い。
「物書き」ってこういう人なんだろうなという感じです。
まだまだいろんなネタがありそう。西村賢太さん本人もお父さんの事も含めて。

ただいきなり出てきて一発当てたわけではなく、西村賢太さんは今まで
2004年「煉瓦」第30号（同年7月）に発表した「けがれなき酒のへど」が「文學界」12月号に転載され、同誌の下半期同人雑誌優秀作に選出され、
2006年「どうで死ぬ身の一踊り」が第134回芥川龍之介賞候補
「一夜」が第32回川端康成文学賞候補
「どうで死ぬ身の一踊り』が第19回三島由紀夫賞候補
2007年「暗渠の宿」が第29回野間文芸新人賞受賞
2008年「小銭をかぞえる」が第138回芥川賞候補
と着実に実績を残しています。

今回の「苦役列車」が西村賢太さんにとって3度目の芥川賞候補で、そしてついに第144回芥川賞受賞と実力もある人です。

西村賢太さん曰く
「自分よりダメなやつがいるんだなという気持ちになってもらえれば書いたかいがある。それで僕も辛うじて社会にいれる資格が首の皮一枚、細い線でつながっているのかなと思う」
と言ってたりして、完全に自分の役を悟ってます。

これはネットで話題になるのも当然ですね。
お父さんが事件を起こし、西村賢太さん自身も逮捕暦があり、中卒フリーターの肩書きで、それをあけすけに西村賢太さん本人が語って笑いを取ったりしている。

西村賢太さんの「苦役列車」では
「中学卒業後に家を出て、日雇い仕事で生計を立てる１９歳の主人公、貫多の日常を描く。友人も恋人もいない貫多は、単調な労働の日々の中で同世代の専門学校生と知り合う。だが、彼に恋人がいることへの嫉妬や学歴コンプレックスから、自虐的で暴力的な言動を繰り返してしまう。作品には閉塞感と滑稽味が同居する。」
と言う話のようですが、西村賢太さんの作品はダメ男の上にDVの暴力男でと言うのが必ず出てくるようで、女性なんかだと好き嫌いが分かれるかもしれません。
ただその中に滑稽で笑えるダメ男って部分があって面白そうです。

これはすごい面白い人が出てきました。